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【歴史】の記事一覧

カマーバンドの由来と襞の向き

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

先日、海外で結婚式を挙げるお客様からファンシータキシードのご注文をいただきました

ブルーのモヘアに黒色の拝絹を被せたタキシードはとても素敵でした

 

さて、タキシードのアクセサリーの一つにカマーバンドというものがあります

 

今回はその、カマーバンドの由来と横襞の向きについて書いてみたいと思います

 

 

カマーバンドの起源はインドといわれており、インドの民族衣装といえば頭に巻くターバンが有名ですが、このターバンと同じように、ウエストに巻く飾り帯も重要な装飾品のひとつがカマーバンドの起源とされています

※カマーバンドという英語の名称もカシミアと同じようにインド語と英語を合成した呼び名です

 

このインドではごく一般的だった飾り帯を、まず最初に自分たちの着るものに取り入れたのがイギリスの海賊だったのでは?といわれています

 

頭に黒い布地を巻きつけ、半裸のこのの部分にそれと同じ黒い布地を巻きつけたパイレーツスタイルは、映画などで誰もがおなじみです

 

 

ウエストに布を巻くというスタイルが欧州のおしゃれな人たちの間で、まず最初に流行したのは17世紀のことだとされています

イギリスの文献に最初にカマーバンドという言葉が登場したのが1616年のことだからです

 

もっともそれは女性物の飾り帯(サッシュ)として流行して、それが現在まで重要なアクセサリーになり続けています

 

問題はなぜそれが19世紀末から20世紀の始めの時代に登場してきたタキシードにどうしても欠かすことのできないアイテムとして定着したかということになると思います

 

 

フォーマルの着こなしの基本の一つに、ズボンのウエストバンドをみせないというものがあります

 

そのため、ズボンの上端を隠すにはベストがどうしても必要で、そのためドレスベストと呼ばれている、生地やカッティングに凝ったベストが大量にデザインされています

 

本来、タキシードの原型はスモーキングジャケットですので、リラックスする際に着用していたことを考えると、夏場に無理してベストを着用するよりは、カマーバンドで隠そうということになったのかもしれません

 

 

このカマーバンドにはさまざまな種類があり、拝絹と共地の黒無地をオーソドックスとして、ネクタイのような色柄のものもあり、また、もう一つの形態的な特徴としてプリーツ付きのものとプレーンのものがあります

 

じつは、このプリーツはポケットやベントといった機能的な要求からできたもので、カマーバンドのプリーツの本来の役目は物入れといわれています

 

観劇やパーティーに出かけるさい、このプリーツの間にチケットや小銭を入れていたとされているからです

わかりやすく言えば、外国式腹巻ということで、映画など観ても寅さんなんかも、物入れとして活用しています

 

プリーツは装飾的なデザインという要素もあって、現在ではその要素のほうが重視されていますが、本来は物入れのためにつけられたという説です

※他の説として、食事をした際の、食べカスを受け止めるなどという説も聞いたことがあります

 

いろいろな説もあるかもしれませんが、どの説にせよ、カマーバンドのプリーツの山は絶対に上向きでなければならないということです

 

プリーツしかり、スーツの一番下のボタンのアンカフスといい、本来的な意味と機能を完全に把握すれば、自然にどのような着こなしをすればいいのかや、着用方法などがわかると思います

 

 

結局のところ、それらが機能美となって表現されるのだと思います

 

 

静岡県のテーラー新屋は、機能美のあるもの、スーツはもちろん飛行機の流線型も大好きです

 

 

 


ダブルブレステッドの歴史

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

昨年からダブルのスーツが流行の兆しを見せていますね

 

ダブルのスーツというと、年配の方にはバブル時代のアルマーニを代表とするゆったりとしたスタイルの印象を受けると思いますが、今回の流行はどちらかと言えば、英国調のタイトでありつつもドレープ感のあるスーツを多く見受けられます

 

 

そこで、今回はダブルブレステッドスーツの歴史なんかを書いてみたいと思います

 

ダブルブレステッド…あらためて断るまでもなく、衣服の両合わせを二重にし、ボタンを縦二列に並べてつけた型式を、英語ではダブルブレステッド、日本のテーラーでは昔から「両前」と呼んでいます

 

「両前」はもちろん英語のダブルブレステッドの訳ですが、本来は名前の通り、衣服の上前・下前にいずれにもボタンホールが開けられて、風向きなどによって左右どちらにも合わせられる仕組みになっていました

 

そもそも、「ダブルブレステッド」という英語が文献類に見られだしたのは、『ニューカレッジ英英辞典』によれば、1701年ごろのこととされています

 

ということは18世紀のはじめには、すでに存在していたということになります

 

事実、これより30年近く前、1674年ごろ、ダブルブレステッドの原型ともいうべきものが見られたという記録もあるようで

 

 

「ブランデンバーグ」という軍人用の防寒外套がそれで、今日のダッフルコートのように、一種のループ状の飾り紐を用いて、これを下前のボタンに引っ掛けて留める形式のものです

 

いずれにせよ、当初のダブルブレステッドは主に軍人用や乗馬用、もしくは旅行用のオーバーコートのたぐいに採用されていたようです

 

 

これが紳士服の上着やベストのたぐいに採用されるようになったのは、後の1730年代に至ってのことであり、さらにそれらが一般化を見るようになったのは、1780年代からのことのようです…もっとも、上着といっても、当時のそれらは燕尾服のような形が中心で、スーツのような上着はまだ登場していませんでした

 

 

背広型の上着、つまりラウンジジャケットに両前のスタイルが見られるようになったのは、19世紀も半ばを過ぎた1862年ころからとされています

 

最初のダブルブレステッド・ジャケットは、6個ないし8個のボタンを縦に平行して付けたものになっていて、留める側のボタンは残らず掛けて着用されました

 

このタイプの上着を当時はリーファーとかピー・ジャケットと呼んでいたようです

 

リーファースタイルは以後19世紀の末まで流行し、新しい世紀の訪れとともにしだいに廃れていきました

 

 

代わって1903年頃、新しいタイプのダブルブレステッドが現れました

 

4つボタン2つ掛け、ないし6つボタン2つ掛けというのがそれであり、この両者はいうまでもなく、今日の両前上着の基本型となったものであります

 

ついで、1910年ころには、なんと2つボタンの両前方まで現れました

 

 

ダブルブレステッドのタキシードは1921-1922年ころのことらしく、スペインの国王、アルフォンソ13世がフランスの保養地ドーヴィルで着たのがそもそもの始まりで、イギリスでもまもなく当時のファッションリーダーの一人であったコメディアン兼ミュージカル俳優でもあったジャック・ブキャナンという人物が、ダブル型のタキシードの流行に先鞭をつけ、1925年ころから注目を集めだしました

 

 

その後、1930年の半ばにロングターン・ダブルブレステッドが登場し、1990年代バブルのときにはアルマーニ、そして今回の流行へと繋がっていきます

 

以上、長々とダブルブレステッドのことを書いてみました

 

歴史を知るともっとスタイルのことに興味を持つかもっ!?

 

 

静岡県のテーラー新屋は、ダブルブレステッドスーツもお仕立ていたします

 

 

 


ダッフルコートの歴史とディテール

静岡県のテーラー新屋のダイスケです 


昨年はチェスターコートが流行りましたね

そんな中、冬の定番として依然として根強い人気のダッフルコート

先日、お客様からダッフルコートの注文をいただきましたので、今回はダッフルコートについて書いてみようと思います



ダッフルコートのその名の由来は、ベルギーのダッフル(duffel)という町で最初に織られた厚地の玉羅紗地から採用されています 

この生地は今では見ることが出来ないので詳しいことはわかりませんが、18世紀に英国の商人の手に寄って大量にアメリカに輸出されていた物だそうです 

一言で言えば、毛布に近いウールのオーバー地で防寒に加えて防水性もあり、当時さまざまな用途に使われ、特に開拓時代のアメリカで喜ばれたようです


この優秀な生地が北へと伝えられ、北欧の漁師達の手によって用いられた結果、ダッフルコートが作り上げられました

寒風の吹き荒ぶなかで作業するのになによりもこの生地は適当だったでしょうし、彼等がその辺に転がっている「浮き」と漁網用のロープを使って考えたものだろうと、容易に想像がつきます 


ピーコートやトレンチコートのように、打合せを左右どちらにも合わせられる特徴を持ち、フードもついたダッフルコートは、第二次世界大戦中にはイギリス海軍の北海警備において「ネパールダッフル」と呼ばれ、ユニホームとしても採用されました(ネパールダッフルの色はネイビーかキャメルだそうです) 



歴史はこれくらいにして、デザイン上の特徴について書いてみたいと思います 


生地の多くはブランケット地を使用しています

本来は、その名の通りダッフルという生地を用いればよいのですが、現在ではそれが作られていないので、いろいろな文献からも想像するのに、ブランケットに近いように思われますし、実際の商品にもこれが多く使われています 


素材はウール以外にも、カシミアやキャメルといった高級獣毛の入ったものやシャギー調の毛羽立たせたもの、メルトンなどとも相性が良く、タータンツィードの裏地をつけるならばフラノ、中綿を入れるならば、コットンや合繊も良いと思います 


最初に目が行く特徴のあるディテールは、先に述べたトッグル(浮き)ボタンです

本来は、浮きですので当然木製ですが、その後街で着られるようになって以降、ツノ製が多く使われるようになっていきました 

いずれにしても、ヒモによって取り付けられ、『木製にはロープ』が、『ツノ製には重さの関係で厚い皮革製のヒモ』が使われることが多いようです 

取り付け方にも特徴があり、ほつれる関係からロープを使用の時は″タマゴパッチ″と呼ばれる硬めの皮革を卵形にカットしたパッチで縫い付けられ、 革ヒモを使用する場合は、ほつれる心配がないので、端を平行に揃えて、ステッチで縫い付けられています


次の特徴はフードですが、これは直接襟に取り付けるタイプと、襟が付いたうえで、取り外しが出来るようになったものがあります 

フードの大きさや深さなどもデザインによって様々です


第三の特徴は肩当てです

トレンチコートもそうですが、外で作業をするのに、いちいち傘などをさせませんから、雨が染み込み難いように2重にしたものを多く見かけます 


その他の特徴として

袖が、セミラグラン型になっているのは、肩先を丸くするためか、生地の都合だろうと思われます 

ポケットはダッフルコートの多くが1重仕立ての関係で、アウトポケットが多いようです 

スリットまたはベントは、丈によって長ければ開けるし、短ければ開けないでも良いと思います



以上、後半は駆け足になりましたが、ダッフルコートについて長々と書いてみました



静岡県のテーラー新屋は、カシミア素材を使ったロング丈のダッフルコートなどは、学生では似合わない、「大人な」ダッフルコートに仕上がるのではないかと思います



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