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第四回若手育成ビスポークテーラーコンテスト入賞

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

最近はもっぱらインスタの方が更新が高いです(インスタはこちら

 

先日、西日本紳士服技術者団体連合会主催の「第四回若手育成ビスポークテーラーコンテスト」が大阪産業創造館で行われ、初出場してきました。

 

結果、「全日本紳士服デザイナー協会会長賞」を受賞することができました。

全日本紳士服デザイナー協会会長賞

 

このコンテストは、50歳以下の若手テーラーを対象としており、出場者には共通のテーマ、共通の生地が与えられ、各々の作品を作り上げるものです。審査は、市場性を最も重要視し、台置き審査と本人(orモデル)が着用してランウェイを歩くという2種類の審査です。

ウォーキング審査

 

審査員は、ドーメルの代表取締役をはじめ、阪急メンズ紳士服商品統括や在大阪イタリア総領事、全日本紳士服デザイナー協会名誉顧問、大阪洋服技能士協会会長など錚々たるメンバーでした。

審査員

 

緊張したし、疲れましたが、初めてのコンクールはとても良い経験になったし、なにより私の周りには若いテーラーが居ないので、若いテーラーと話ができたことがとても楽しかったです。(大阪の仕立屋業界は活気がありました)

 

 

 

さて、ここからは、せっかく仕事の合間の時間を見つけて仕立てたので、作品について書いてみたいと思いますが、ちょっと専門的で難しい内容になっています。どちらかと言えば、次回以降のテーラーコンテストに参加する人が検索して訪れた際に参考になればという視点で書いています。

 

まず、今回は「ジャポネ フォルマーレ(日本のよそゆき)」というテーマで、生地は紺無地でドーメル社のアマデウス365でした。

一つボタンスリーピース

一つボタンスリーピース


私は、今回のテーマ「ジャポネ フォルマーレ」を『日本文化×クラシックスタイル』と捉えました。全体的なシルエットはトレンド感に合わせつつも※1、細部には独自の雰囲気&着心地となるダック芯を使用し※2、また、等半袖にターンバックカフ※3を、スラックスはインプリーツ※4にするなどのエッセンスを加えることで、クラシックスタイルを表現しました。そして、日本流行色協会が発表した令和慶祝カラー※5の梅色裏地に脇刺しを加えることで「裏勝り」文化※6を、さらには、漆塗りボタン※7、副素材には地元浜松の特産である遠州織物※8を用いることで、日本文化を表現しました。一瞥したところ普通のスーツのようですが、こだわりの詰まった、男ゴコロをくすぐる一着となっています。

 

上記が、自分がコンクール用に書いたディスクリプションなのですが、少しずつ説明してみます。

 

※1 トレンド感について

大きなファッションの流れとして80年代後半のバブル時代のリバイバルがトレンドなのではと考え、やや低めのボタン位置とゴージライン、フィット感は身体に合わせたギリギリのラインよりも、ややゆとり量を加えています。

もう少し細かなバランスを言えば、ラペルはピークドラペルだと威厳が強すぎるのでセミノッチドラペルに、ボタンを留めた際に胸元が着物の雰囲気を意識するためにダブルの襟付きベストにしています。また、薄い肩パッドに、やや狭めの肩幅など個人的な好みも反映しています。

セミノッチ

セミノッチ

着物の重ね襟のイメージ

着物の重ね襟のイメージ

 

※2 ダック芯について

ダック芯とは、麻の芯のことです。戦前の日本で使われていたり、リンプルックで有名なイギリスのアンダーソン&シェパードで使われたり(A&Sはダック芯をバイヤスに使っている?)しています。毛芯にはない、独特の柔らかさがあり、クラシックな雰囲気を表現しました。ただ、毛芯と比べてデメリットもあり、芯に復元力がありません。そのため一度皺になるとアイロンをかけないと戻らないので、お客様のスーツに使用する場合は、その旨をよくご理解いただいたうえで使っています。

ダック芯

ライトウェイトのダック芯

毛芯

毛芯

 

 

※3 等半袖とターンバックカフについて

等半袖は、fifty-fifty sleeveの直訳?だと思います。あまり一般的ではないのですが、イギリスの昔からやっている仕立屋さんとか、昔の軍服などにもみられるディテールです。普段のお客様には使いませんが、個人的に好きなディテールの一つです。(20代の頃、すごく調べたり、研究してみたりしました)

スーツの袖は山袖と下袖の2枚に分かれていますが、現代の袖は山袖と下袖の差寸が3㎝前後です。それを同じ幅にするのですが、袖幅の差寸が小さくなればなるほど、クセ取り部分が縫い目側になっていくので、袖のカーブを強くすることができ、腕にフィットさせることができます。(レディースの場合は6センチぐらい差寸があるので、ほとんど直線の袖ですよね?)また、個人的に袖のバランスに無理がないので普通の袖と比べて動かしやすい感じがします。

目に見えるデメリットとしては、静止状態で袖口に縫い目が見えるので一般的な美的感覚としては、よろしくないのかもしれません。その袖口の縫い目を見せないようにしつつ、クラシックなスーツでたまに用いられたり、007でのタキシードにも使われたりしていた「ターンバックカフ」を用いました。

 

標準的なバランスの袖

標準的なバランスの袖

等半袖(fifty-fifty sleeve)

等半袖(fifty-fifty sleeve)

ターンバックカフ

ターンバックカフ

 

 

※4 インプリーツについて

インプリーツはクラシックスタイルでよくあるディテールですね。内向きにタックがあるので、O脚人にも向いています。

 

※5 令和慶祝カラーについて

日本流行色協会が、新元号に合わせ、国民の皆様の慶祝の気持ちを表すものとして発表しています。この協会が発表した慶祝カラーは「梅」「菫」「桜」の3色です。

令和慶祝カラーについて(https://www.jafca.org/colorcolumn/20190402.html

 

 

※6 裏勝り文化について

裏勝りとは、江戸時代から伝わる日本の文化で、贅沢禁止の令が出た時代に、表はシック(質素?)だけど、裏に派手な色柄などを用いる「粋」の文化です。今回は、派手な裏地に、昔のテーラーが施していた脇刺し(脇を補強する為と言われていますが、ほぼ意味がないので、現代では、付加価値的なデザインとなっている??)を加えました。

個人的には、派手な裏地はあまり好きではないです。一点豪華よりも、全体的なハーモニーが「洋」服には必要なのではないかと思っています。

令和慶祝カラーと脇刺し

令和慶祝カラーと脇刺し

 

 

※7 漆塗りボタンについて

漆塗りボタンは、プラや水牛などとは違う、独特の光沢感があります。このボタンのストックも残りわずかとなりました。

漆塗りボタン

漆塗りボタン

 

 

※8 遠州織物について

スラックスの腰裏とポケット部分、ベストの裏に遠州織物を使用しました。「和」っぽい柄は今までになかったので新鮮です。浜松は、綿の産地です。近年は遠州織物の中でも、特に「遠州綿紬」が再び脚光を浴びつつあります。せっかく地元の素材を使える機会がある職業ですので、積極的に使い、地元の活性化の一助を担っていけたらと考えています。

いままでに、遠州綿紬のジャケットや、遠州ツイードを使ったコートなども仕立てています。

遠州織物の裏地

遠州織物の裏地

遠州織物の腰裏と袋地

遠州織物の腰裏と袋地

 

 

 

最後に

コンテストへの参加は初めての経験ですので、これが正しいやり方だったのか、また、どの部分をどこまで評価していただけたのか自分にはわかりません。今回の作品を仕立てるにあたり一番感謝しているのは「お客様」に対してです。上記で色々説明などを書いていますが、これらのすべては、過去にお客様に提案したことや、お客様から提案されたものの中からテーマに合わせて組み合わせただけです。お客様に恵まれたことを改めて感じたコンテストでした。

 

今後も努力精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。


オーダーネクタイはじめました

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

最近は、もっぱらインスタ更新の方が多く、ブログは久しぶりの投稿となります(インスタはこちら

 

皆様は、ネクタイを購入するにあたっての決め手はなんでしょうか?きっとスーツに合わせた色柄や素材ではないかと思います。以前より、ネクタイに対して、もう少しお客様にご提案ができたら嬉しいなと思い、この度ネクタイの取り扱いを開始しました。

 

ネクタイの歴史は、17世紀頃に首に巻いたスカーフが起源とされており、現在のネクタイは、国産で140センチ前後の長さで芯をシルクで包んだものが主流です(海外製品だともう少し長いです)

 

では、オーダーネクタイだとどんなことが可能なのか??お好みの色柄はもちろんのこと…

 IMG_1433

 

 

パーフェクトフィットな長さのネクタイをお召しになることが可能です。ネクタイの正しい長さは、太い方(大剣部分)がベルトにかかる長さが適切と言われていますが、首の太さやベルトを締める位置、結び方によって十人十色長さが変わってきます

 

そして、芯の厚さや裏地を選ぶことも可能です。芯は結びやすさやディンプル映えや皺の復元に大きく作用します

IMG_1429

 IMG_1430

 

また、一般的なネクタイ以外にも…

 

着用した際に軽い印象を与える、剣先の芯をカットし三巻仕様したタイプのもの

IMG_1390

 

芯ありの贅沢なセッテピエゲ(7hold)

IMG_1392

 

芯を一切使用せず、スカーフを折りたたんだような柔らかさのある10回折りのディエチピエゲ

IMG_1393

 

その他にも、剣先の太さを選ぶことができるので、ラペルの太さと完璧に合わせたネクタイにすることも可能ですし、ズートスーツ(zoot suits)をお召しになるズーティー(彼らは、剣先が11センチぐらいのものをお召しになります)や、モッズ(mods)がお召しになるような剣先6センチ前後のものもお仕立て可能です

IMG_1424google画像検索より

 

 クラブの皆様で合わせたネクタイをお召しになるのにも良いかもしれません

 

ご興味がございましたら、お気軽にお問合せください

お待ちしています!

 


仕立屋の結婚式

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

本日でテーラー新屋は、現在の場所に店をかまえて無事50周年を迎えることが出来ました(クニエダ洋服店から数えるともっと長いですが…)

これも偏に、応援してくださる皆さまのお力だと思っております

次の50年後の100周年に向けて、より一層「着る人に自信と風格を与える」洋服づくりをしていきたいと思いますので、皆さま、今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます

 

 

さて、私事なのですが…昨年結婚をしました

普段は、結婚式を挙げるお客様に対してアドバイスをする立場の私ですが、それなら仕立屋自身が結婚式を挙げる場合どんな服を仕立て、どんな着こなしをするのか参考になる方もいるのでは?と思い、書いてみます

 

 

まずはどんなスタイルにするのか、自分自身にカウンセリング

Q 日時の確認

A 秋ごろ、14時から始まります

 

Q お色直しは?

A 1回希望します

 

Q こだわるところはありますか?

A 基本的に品のある、クラシックな感じにしたいですが、披露宴では少しだけ変化を持たせたいです

 

 

上記を踏まえたうえで、私は…

挙式:アスコットモーニング(別名:モーニングスーツ) ※1

披露宴:ディナージャケット(別名:タキシード、スモーキングジャケット、ブラックタイ)

に決めました

 

 

アスコット競馬場が由来のアスコットモーニングにした理由には

・挙式が18時以前なので、午前のフォーマルであること ※2

・普通のモーニングコートに比べて華があり、結婚式に向いている

・グレーの色味が白色の花嫁を引き立てる(新郎が派手すぎたり、薄い色味や白色を着て新婦のドレスと被ってしまったりするのを避けました)

アスコットモーニング1

アスコットモーニング1

 

 

披露宴用に仕立てた洋服は、ディナージャケット(タキシード)の中でも少しくだけた感じのするファンシー・タキシードにしました

・披露宴は18時をまたぐ ※2

・デザインはダブルブレステッドで、生地は光沢を持たせたくベルベット

・ディナージャケットなので、拝絹(襟の黒いやつです)をつけますが、スラックスの側章は省きました

・新婦のややカジュアル気味なカクテルドレスに合わせて(もし新婦がオーソドックスなカクテルドレスならオーソドックスなスタイルにしました)

カクテル・ディナージャケット

ファンシー・タキシード1

 

 

礼装は、スーツのみでなくコーディネートも大切です

 

アスコットモーニング2

アスコットモーニング2

 

スタイル:アスコットモーニング

生地:Taylor & Lodgeのオイルスパン

シャツ:ダブルカフスの水色クレリックシャツ ※3

ネクタイ:薄い色味のパープル

チーフ:光沢の無いリネンのもの

カフリンクス:小ぶりのゴールドで光沢の無いもの ※4

靴:内羽根のストレートチップ

アクセサリー1:ブレイシス(サスペンダー)を用いるとベストを短くすることが出来、バランスが良くなります

アクセサリー2:グレーの鹿革の手袋

 

 

披露宴では(【】は基本的なディナージャケット)

 

ディナージャケット2

ファンシー・タキシード2

 

スタイル:拝絹のダブルブレステッド 【もしくはシングルブレステッドのピークorショール】

生地:濃紺のベルベット 【黒色が基本】

シャツ:スタッズ無しの白色ダブルカフスのウィングカラーでヒダの無いもの 【スタッズ&ヒダ有の方が一般的】

ネクタイ:黒色の手結びの蝶ネクタイ

チーフ:少しだけアクセントを付けたく、濃赤のシルク 【白色のシルクチーフ】

カフリンクス:オニキス 【または白蝶貝】 ※4

靴:内羽根ストレートチップ 【オペラパンプス】

 

 

書くとこんな感じになります…細かくていやになりますね(笑)

私は、結婚式の衣装には正装というよりも盛装という意味合いが強いと思っていますので、あまり固苦しく考えず、細かなルールは必ずしも守らなくても良いと思っています

 

ただ、基本的なマナーと言うか考え方があります

 

昼の礼装には、色物は使えますが光沢は避ける  夜の礼装には、光沢を用いますが色柄は避ける

 

です

 

実はアスコットモーニングのコーディネートをどうしようか少し迷っていました

そこで、私はチャールズ皇太子のアスコットモーニングの着こなしを参考にさせていただきました

 

チャールズ皇太子

チャールズ皇太子1

チャールズ皇太子4

チャールズ皇太子2
チャールズ皇太子3

チャールズ皇太子3

チャールズ皇太子4

チャールズ皇太子4

 

上記のマナーを押さえつつ、自然体かつ上品に着こなしていて、大変勉強になりました

 

 

そういえば、日本では、昨年北川景子さんと結婚されたDAIGOさんがモーニングスーツをベースにデザインされた服をお召になっていましたね

ダイゴさん

DAIGOさん

 

google画像検索にて

 

 

 

今後は、自分が結婚式の衣装を決める際に感じたこと気になった点も踏まえてお客様の相談にのり、より一層満足してもらえるような洋服を仕立てられるよう頑張ります

 

 

浜松市のテーラー新屋は、結婚式を挙げるすべての人を応援しています、そして、次の50年に向けて更なる努力をしていきたいと思います

 

 

※1 一般のモーニングコートは、黒のジャケットにコールズボンと呼ばれる縞のスラックス、それにアイボリーやグレー、共地のベストを着用しますが、モーニングスーツは上下ベストとも同じ(スーツ)生地のものを使用します(モーニングスーツの中でも特にグレーのものを女王が臨席するアスコット競馬場で着用されることからアスコットモーニングと呼ぶことが多いです)

 

※2 6時を境に午前のフォーマルには、フロックコート、モーニングコート、そしてイブニングコートがあり、午後のフォーマルにはイブニングコート、ディナージャケットがあります(フロックコートが廃れた現在、午前の正礼装にもイブニングコートが用いられることがあります)

 

※3 クレリックシャツは日本だとクールビズで着用するイメージがありますが、元来、昼のフォーマルな装いの一つです

 

※4 カフリンクスの昼夜の使い分けイメージは下の写真のような感じです

昼用

昼用

夜用

夜用

 


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