About us

About us 私たちについてAbout us 私たちについて

1966年創業のテーラー新屋は浜松にある小さな仕立て屋です。「着る人に、自信と品格を与える一着を」をコンセプトにスーツのお仕立てに取り組んでいます。
また、「良いデザインは、実用を満たす機能から生まれる」が私たちのクラフト哲学となり、着たときにこそ衣類の本来の機能を発揮するものと考えています。自然なものに過剰な演出は必要なく、衣類を纏ってから本当の心地よさが静かに感じられます。
私たちの仕立ては、熟練のカッター(裁断師)とテーラー(縫製師)が緊密に連携し、見えない部分にこそ素材と手間を惜しみません。だからこそ平面だった布に奥行きが生まれ、人体の丸みを写す自然な立体が立ち上がります。内側で積み重ねた見えない技術が外側の品格を形づくります。

オーナー 國枝 大祐オーナー 國枝 大祐

オーナー國枝 大祐

生まれた時から作業場は遊び場。ハサミの音、ミシンのリズム、作業場から流れるラジオ――そんな環境で、自然とビスポークに親しみました。七五三では父が仕立てた紺ブレを、学生時代は父が仕立てた学生服ズボンやシャツを着て照れくささも覚えつつ、服の力を身近に感じてきました。中学からファッションに興味を持ち、最初に袖を通したスーツはモッズを意識してお客さまからお下がりの紺のベルベットのスーツ。古着、バイカー、ストリート……幅広いスタイルを通して、「似合う」と 「らしさ」を学びました。

将来は獣医を志した時期もありましたが、父の「家を継ぐか」の一言で道が開けます。2000年代初頭、仕立て屋は逆風の時代。父から「どんなに良い服でも、知ってもらえなければ意味がない。技術は後で教える」と背中を押され、カリフォルニアのカレッジでファッション流通経済とマーケティングを学び、サティフィケイトを得て帰国しました。帰路に立ち寄った英国サヴィルロウで受けた衝撃は鮮烈でした。日本のコンクール受賞作のような “模範解答” とは異なる色気のあるシルエット。帰国後は金洋服店・服部先生の指導のもと、先生が創り出す自由で大胆な裁断と縫製に出会い「スーツの仕立てはもっと自由でいい」と確信します。

いまの私を形づくるのは、父から受け継いだ技術と仕事への向き合い方、サヴィルロウで知ったスーツの色気、そして服部先生の技法。私はその三つを土台に、お客さまの毎日に自信と品格をもたらす一着を仕立てています。

スタッフ 杉岡 大河

スタッフ杉岡 大河

岡山県生まれ。静岡大学情報学部への進学をきっかけに、浜松での暮らしが始まりました。服に興味を持ったのは大学1年の頃です。それまでは無頓着で、手頃な既製スーツを“無難に”着ていました。転機は映画『キングスマン』。アクション目当てで観たはずが、コリン・ファースのスーツに心を射抜かれ、「良いスーツとは何か?」が頭から離れなくなりました。マナーやネクタイの結び方、柄の意味、歴史――本やネットで調べ続けるうちに、ひょんな縁でテーラー新屋に出会い、スーツの内側とフルオーダーの世界に触れます。紙にも画面にも載っていない“リアル”の深さに惹かれつつ、答えはまだ見つかりませんでした。
将来を模索していた折、コロナ禍で授業が全面オンラインに。画面の前だけの毎日に違和感を覚え、思い切ってスーツの道へ。基礎を学ぶため岡山の服飾専門学校で2年間学び、浜松へ戻って修行を続けています。作業場では、師匠・國枝と、針一本の精度にこだわる職人たちに囲まれ、「設計としての仕立て」と「縫いとしての仕立て」を両側から学べる日々です。

ある日、師匠に「良いスーツとは何ですか」と問いました。返ってきたのは「すべての人に認めてもらえるような良いスーツは、実は自分もよくわからない。」という言葉。肩の力が抜けるようで腑に落ちました。伝統と技術を信じてくださるお客さまがいる――その信頼に応え続けること。いつか自分なりの答えを、言葉ではなく着心地と佇まいで示すこと。それを目標に、いまも手を動かし続けています。

HISTORY

昭和10年
初代、國枝國雄が「クニエダ洋服店」を砂山町に店を構える
昭和29年
猛仁がクニエダ洋服店に丁稚として入る
昭和38年
猛仁が二代目を継ぐ
昭和39年
クニエダ洋服店は職人を12人抱える
昭和41年
1月16日に独立をする
昭和42年
2月21日に紺屋町に店を構える
昭和45年
現在の場所(利町)に「テーラー新屋」として店を構える
昭和52年
現在の場所に新店舗を構える
平成12年
大祐がテーラー新屋に入る
平成13年
大祐がアメリカへ留学
平成16年
帰国後、大祐が三代目を継ぐ為に更なる修行
令和 2 年
大佑が代表に就任
令和 5 年
大河がテーラー新屋に入る
令和 5 年
店舗リニューアル
HISTORY

受賞歴

平成17年 9月
愛知県注文洋服協同組合主催 愛・地球博パートナーシップ事業第三回中部日本注文紳士服技術コンクール
グリーンリボン賞
令和元年 7月
全日本紳士服デザイナー協会 西部技団主催第四回紳士服若手技術育成コンテスト 会長賞
令和 4年11月
一般社団法人静岡県技能士会連合会 紳士服製造 優秀技能士に認定

Making process

  • Step01

    スタイルデザイン

    まずは用途や着用シーン、体型の癖、好みの雰囲気を丁寧に伺い、無理のないシルエットと必要な機能を“対話の合作”として定めます。完成像が見えたところで、設計の方針を型紙(カルテ)に落とし込み、以後の基準として大切に保管します。

    Step 01 スタイルデザイン
  • Step02

    生地の選定

    スタイルが決まったら、その条件に合う生地を選びます。色柄のご希望を伺い、ドレープ性・復元力・季節適性を踏まえて数点をプロの目でご提案。実際に生地に触れ、重さや風合い、自然光での見え方も確認します。裏地やボタンも同時に選定できるのがオーダーメイドの楽しみ。お任せの場合は、目的に最適な組み合わせをご提案します。

    Step 02 生地の選定
  • Step03

    採寸

    お仕立ての方法に応じて、約35か所を計測します。スタンダードラインでは、体型の傾向をとらえバランス設計を行う胸度式を採用。ハンドメイドラインでは、細かな寸法を取り、骨格を製図に写し込み、その上にスーツの形を“肉付け”していく短寸式を用います。立位・着座・腕上げなどの動作も確認し、可動や皺の流れを設計に反映します。

    Step 03 採寸Step 03 採寸
  • Step04

    型紙作成

    採寸値とスタイル設計を基に型紙を作成します。テーラー新屋では短寸式の複雑さを補うため、自社開発のCADで骨格の基礎線のみを出力。そのうえで手作業により、前後左右・回旋のバランスを整えます。数字だけに頼らず、採寸時に触れて得た身体情報を線へ翻訳。工場のように肩幅が広がれば自動的に背幅も広がるといった一律グレーディングは用いず、部位ごとに独立して調整します。

    Step 04 型紙作成
  • Step05

    裁断

    まず“地のし”と呼ばれる工程で、アイロンの熱と蒸気により生地の歪みと地の目を整えます。その後、1着分(約3.2m・幅1.5m)の生地に前身頃・細腹・後身頃・山袖・下袖・ベスト・ズボン前身・後身を無駄なく割り付けます。当店では先代より、毛流れが目立たない生地でも逆毛で断たないという習わしを守っています。切りびつけと合印を施し、仮縫いに備えます。

    Step 05 裁断
  • Step06

    仮縫い &
    フィッティング

    裁断した各パーツに切りびつけを打ち、しつけ糸で組み上げた仮縫いで全体像を確認します。フィッターが大きな縦・横のバランスや肩周りの馴染み、動作時の皺の出方を確認し、ピンとチョークで補正。フィット感・シルエット・ディテールのご希望も伺います。短寸式で裁断した場合は、基本的に2回の仮縫いをお願いしています。

    Step 06 仮縫い &フィッティング
  • Step07

    本縫い

    仮縫いで確定した修正を型紙と生地に反映し、熟練の縫製師が本縫いに入ります。 裁断師の描いた線の意図を汲みながら、見えない部分ほど手間を惜しまず、芯据えとアイロンワークで平面の生地に人体の丸みを宿らせます。スラックスはオールセットと呼ばれる、1時間以上かけた熱と蒸気のプレスで“クセ取り”を固定。着るほどに体へ馴染む立体を育てます。

    Step 07 本縫い
  • Step08

    お渡し

    上着の本縫いだけでも40時間以上の手間をかけ、世界でひとつの一着が完成します。最終試着で着心地と見え方を整え、必要があれば微調整。お選びいただいたスタイル・生地・裏地・ボタンが一体となり、日常に自信と品格を添える相棒としてお渡しします。長く快適にお召しいただけるよう、メンテナンスのご相談も承ります。

    Step 08 お渡し