2016年4月24日
カテゴリー :コラム, 仕立て, 歴史, 着こなし
静岡県のテーラー新屋のダイスケです
若葉の緑も色濃くなりはじめ、日中は汗ばむほどの陽気な日が多くなってきました
私の住んでいる浜松市では、5月のGWに行われる「はままつ祭り」の準備が着々と進んでいます
さて、先代より仕立屋をやっているとスーツ以外のご注文をいただくことがあります
礼装はもちろんのこと、例えば学生服やトンビ、白衣などの注文をいただいたこともあります
先日お客様より「軍服」のご注文を頂き、それが仕立てあがりました
今後、自分よりも若い仕立て屋さんが、私と同様「軍服」のご注文を頂いた際の助けになれば良いなと思い、今回は軍服を仕立てる際のポイントを書いてみたいと思います
まず、今回仕立てたのは「三式陸軍(近衛兵)将校」というご注文でした
残念ながら現物を拝見することは出来ませんでしたが、私自身、ネットはもちろんのこと図書館や映画、護国神社、先輩の仕立屋さんの話などなるべくたくさんの軍服写真や情報を探して仕立てました
シルエットはこちらを参考にしました
仕立てあがったものがこちらです
生地は厚手のサージを使用し、上着は学生服(細腹無し)、ズボンは乗馬ズボンをベースに裁断します
付属品はネットで探して購入します
軍服の特徴ですが、アームホールを狭く、袖は袖山を低く袖幅を広くした所謂「めがね袖」にすることで腕が上へ動かしやすいようにします(社交ダンス用の袖に近い形です)
軍袴は基本乗馬ズボンの製図ですが、狩猟ズボンのように実用性重視にするために脇の膨らみを少なくし、乗馬ズボンに比べ後ろを浅くし起こした方が良いのではないかと思います
続いて細かなディテールについてです
資料を見ていると袖はポケット位置を基準に多少の上下で切り替えをしているようです(これは私個人の推測なのですが、払い下げをした際に袖丈だけ長くするのに都合が良いのかな?なんて思います)
また、三式袖線は後ろに向かってハの字になるように取り付けます
ベントは軍刀を吊るす為に左側のみに入ります
位置はスーツと違い、細腹にあたる部分の中間でベントの深さはやはりポケット位置を基準にして良いと思います(仮縫いで微調整してください)
裏地部分の処理は写真のようにしてます(本来裏地の色は国防色と呼ばれる色を使うそうです)
襟部分は共地ではなく裏地を使い、襟腰は学生服よりも高くソフトカラーを付ける為のカラーボッチ(この言葉を知らず問屋で探すのに困りました)を縫い付けます
続いて、軍袴のディテールについてです
右側にウォッチポケットがつき、フロントフライはボタンを使います
腰裏や天狗天前のディテールは写真を参考にしてください
ウエスマンは10センチ前後、ベルトループは剣帯ベルトが7.5センチであることを加味して作ればよいと思います
裾には5つボタンがつきます(採寸時に膝、膝下、ふくらはぎの寸法をお忘れなく)
また、裾のスレーキ部分には薄い芯をいれた方が良いと思います
後ろにはバックベルトがつきますが、今回はナシのご注文でした
最後に略帽を共地で仕立てます
今回はオーダーメイドの帽子を作っている「シャポード・マユ」さんにお願いしました
とても親切で、丁寧に作ってくれました
いかがでしたか?今後軍服を仕立てる際の参考になったでしょうか?
九八式と三式でまた少し違うようなのでご了承ください(…とはいっても、九八式を流用した三式などもあるみたいです)
実物を見ることが出来なかったので細かなディテールは違う可能性はありますが、おおまかにはこんな感じで良いのではないか?と思います
最後に
私自身、軍服ははじめての注文で戸惑うことが多かったですが、仕立てる機会をくれたお客様に感謝したいと思います
折角の仕立屋なんですし、お客様の社会的立場に応じたものは勿論のこと、今後もお客様の欲しいデザインのものまで出来る限り要望に沿って仕立てていきたいと思います
浜松市のテーラー新屋は軍服も仕立てますが、なるべく争いがない方が好きですし、平和であることを強く望んでいます