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【歴史】の記事一覧

オックスフォードとケンブリッジ

あけましておめでとうございます。2025年もよろしくお願いいたします。

ありがたいことに例年に比べ1月2月のご注文が多く、なかなかブログを更新できずにいました。

新年のあいさつが遅れて申し訳ありません。

 

さて今日の話は「オックスフォードとケンブリッジ」です。

これらはイギリスの地名であり、大学の名前でも広く知られています。

私はイギリスの映画やドラマが好きでよく視聴しています。たくさんのイギリスの作品を視聴して今まで気になってはいたけど

放置していた言葉が今日のテーマの「オックスフォードとケンブリッジ」です。

作品の中では「君はオックスフォード(ケンブリッジ)大学出身だろ?」や「だからオックスフォード(ケンブリッジ)の人は苦手なんだ」などといった使われ方をします。

オックスフォードの人、ケンブリッジの人、どんな人か皆さんはご存知ですか?

これらの言葉は思想や性格のことを表しています。

オックスフォード大学は保守的な位置にいると言われています。そのオックスフォード大学に勤めていた革新派の教授たちが設立したのがケンブリッジ大学です。

(※これらの意味はステレオタイプであり、現在ではそういった意味を持って使われることはあまり無いみたいです)

そこで紳士服の中にもオックスフォードと名の付くアイテムがあります。オックスフォードシャツやオックスフォードシューズ(ストレートチップ)などです。

オックスフォード〇〇というアイテムはオックスフォード大学が由来となっている場合があり、シンプルで保守的なデザインが多い印象です。

キングスマンでハリーがエグジーに革靴を選ぶシーンで「ブローグ(装飾)じゃなくオックスフォードで」といったのは古き良き伝統を重んじるキングスマンの

思想が伝わるセリフだっと思います。

 

現代の服装史では紳士服は保守的な装いであると思います。では、紳士服を作る私たちテーラーはどうなのかというと「保守的でありながら革新的でなければいけない」と思っています。

古くからあるスタイルを守りつつ、トレンドやお客様のご希望に沿えるように進歩していく必要があると思っています。

余談ですが、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の2つの大学を卒業したのがスティーブン・ホーキング博士です。

 

 


スペンサージャケットの興味深い起源

はじめまして、新人の大河です。

昨年の4月から修行しています。

 

今回の話はスペンサージャケットです。スペンサージャケットは本来、6釦3つ掛け式の尾のない燕尾服型のジャケットまたはコートを指します。このオリジナルのスペンサージャケットは1790年に見られるようになり19世紀では男女の区別なく上流社会で流行し、1850年代に廃れたことが伝わっています。

 

ところで、このスペンサージャケットの起源には2つの興味深い説があることをご存知でしょうか?

どちらの説も18世紀末の貴族、ジョージ・ジョン・スペンサーの失態から生じたものである。

 

一つはスペンサー卿が狩場で焚火を囲んでいた際に、着ていた狐狩り用の燕尾服の尾っぽを綺麗に焼いてしまい、それがたちまち社交界に伝わり流行の最先端を切るものになってしまったという説。

 

もう一つは同じくスペンサー卿が騎馬で遠乗りに出かけた際に、何かのはずみで突然馬から振り落とされ、その拍子に乗馬服の尾っぽと袖が引きちぎれてしまった。

この一件がたちまち仲間の紳士たちに知れ渡り、一世の流行にまでなってしまったという説。

 

つまり「焚火説」と「落馬説」があり、いずれも1789年頃の出来事だったとされています。どちらも滑稽な説ですが皆さんはどちらの説を信じますでしょうか?

 

 


日本陸軍三式軍服の仕立て

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

若葉の緑も色濃くなりはじめ、日中は汗ばむほどの陽気な日が多くなってきました

私の住んでいる浜松市では、5月のGWに行われる「はままつ祭り」の準備が着々と進んでいます

 

さて、先代より仕立屋をやっているとスーツ以外のご注文をいただくことがあります

礼装はもちろんのこと、例えば学生服やトンビ、白衣などの注文をいただいたこともあります

 

 

先日お客様より「軍服」のご注文を頂き、それが仕立てあがりました

今後、自分よりも若い仕立て屋さんが、私と同様「軍服」のご注文を頂いた際の助けになれば良いなと思い、今回は軍服を仕立てる際のポイントを書いてみたいと思います

 

 

まず、今回仕立てたのは「三式陸軍(近衛兵)将校」というご注文でした

残念ながら現物を拝見することは出来ませんでしたが、私自身、ネットはもちろんのこと図書館や映画、護国神社、先輩の仕立屋さんの話などなるべくたくさんの軍服写真や情報を探して仕立てました

 

シルエットはこちらを参考にしました

テーラー新屋 軍服ベース

 

 

仕立てあがったものがこちらです

 テーラー新屋 軍服1

 

テーラー新屋 軍袴1

 

 

 

生地は厚手のサージを使用し、上着は学生服(細腹無し)、ズボンは乗馬ズボンをベースに裁断します

付属品はネットで探して購入します

 

軍服の特徴ですが、アームホールを狭く、袖は袖山を低く袖幅を広くした所謂「めがね袖」にすることで腕が上へ動かしやすいようにします(社交ダンス用の袖に近い形です)

軍袴は基本乗馬ズボンの製図ですが、狩猟ズボンのように実用性重視にするために脇の膨らみを少なくし、乗馬ズボンに比べ後ろを浅くし起こした方が良いのではないかと思います

 

 

続いて細かなディテールについてです

資料を見ていると袖はポケット位置を基準に多少の上下で切り替えをしているようです(これは私個人の推測なのですが、払い下げをした際に袖丈だけ長くするのに都合が良いのかな?なんて思います)

また、三式袖線は後ろに向かってハの字になるように取り付けます

テーラー新屋 軍服2

 

 

ベントは軍刀を吊るす為に左側のみに入ります

位置はスーツと違い、細腹にあたる部分の中間でベントの深さはやはりポケット位置を基準にして良いと思います(仮縫いで微調整してください)

裏地部分の処理は写真のようにしてます(本来裏地の色は国防色と呼ばれる色を使うそうです)

テーラー新屋 軍服3

 

 

襟部分は共地ではなく裏地を使い、襟腰は学生服よりも高くソフトカラーを付ける為のカラーボッチ(この言葉を知らず問屋で探すのに困りました)を縫い付けます

テーラー新屋 軍服4

 

 

 

続いて、軍袴のディテールについてです

右側にウォッチポケットがつき、フロントフライはボタンを使います

腰裏や天狗天前のディテールは写真を参考にしてください

テーラー新屋 軍袴2

 

 

ウエスマンは10センチ前後、ベルトループは剣帯ベルトが7.5センチであることを加味して作ればよいと思います

裾には5つボタンがつきます(採寸時に膝、膝下、ふくらはぎの寸法をお忘れなく)

また、裾のスレーキ部分には薄い芯をいれた方が良いと思います

テーラー新屋 軍袴3

後ろにはバックベルトがつきますが、今回はナシのご注文でした

写真 2016-04-18 16 04 43

最後に略帽を共地で仕立てます

今回はオーダーメイドの帽子を作っている「シャポード・マユ」さんにお願いしました

とても親切で、丁寧に作ってくれました

写真 2016-04-21 13 42 42

いかがでしたか?今後軍服を仕立てる際の参考になったでしょうか?

九八式と三式でまた少し違うようなのでご了承ください(…とはいっても、九八式を流用した三式などもあるみたいです)

実物を見ることが出来なかったので細かなディテールは違う可能性はありますが、おおまかにはこんな感じで良いのではないか?と思います

 

 

最後に

私自身、軍服ははじめての注文で戸惑うことが多かったですが、仕立てる機会をくれたお客様に感謝したいと思います

折角の仕立屋なんですし、お客様の社会的立場に応じたものは勿論のこと、今後もお客様の欲しいデザインのものまで出来る限り要望に沿って仕立てていきたいと思います

 

 

 

浜松市のテーラー新屋は軍服も仕立てますが、なるべく争いがない方が好きですし、平和であることを強く望んでいます


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