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ツィードの歴史

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

めっきりと寒くなりましたね

やはり寒くなるとファッションは発達するもので、街中を見回しても暖かい気候の時と比べお洒落だなと思う人を多く見かけます

 

 

前々回に「ツィードの種類」について書いてみたので、今回はそもそもツィードとは??というところも踏まえながら書いてみたいと思います

 

 

果実や野菜に旬があるように服地にもそう呼ばれるのにふさわしいものがあります

たとえば、春にはギャバジンやファインウールなどがあり、夏にはリネンやシアサッカーなどがあります

秋には同じくコーデュロイやフランネルがあり、冬にはカシミアやローデンクロスなどがあります

 

これらのような「季節の素材」の中にツィードがあり、毎年秋になると決まったように顔を出します

少なくとも1930年代から以後今日に至るまでツィードが姿を見せなかった秋はないのではないでしょうか?

 

ツィードはそれほど秋という季節に似つかわしい「季節の素材」としてお馴染みになっています

 

なぜそこまでツィードという素材は人気があるのか?

私個人的には、おそらくツィードという素材が持っている一種の「デニム感覚」とでもいうべき特性が、この素材を魅力あるものにしている最大の要因ではないかと思います

丈夫で長持ちする耐久性、バラエティー豊富な多様性、それに着こなし自在な多用途性などはデニムにもツィードにも共通して当てはまります

また、ツィードもデニムも着込めば着込むほど、洗えば洗うほど味わいが深くなり、また古くなればなったで、それ相応の趣が認められます

 

 

前置きが長くなりましたが

さて、ツィードとはスコットランドおよびアイルランドをその主要産地とする、厚手の紡毛織物全般を指しています

これには本場のいわゆる純正ホームスパンのみならず、機械織によるツィード仕上げの紡毛地や合繊混紡の紡毛地まで含まれています

しかし元来はスコットランドの農家でスコッチ種羊毛を原料染めにして、それを手紡きにした太い糸を用いて手織り機で織り上げた2*2の綾織りのシングル幅ホームスパンのみを指しこれが狭義のツィード、つまり「スコッチツィード」でした

 

スコッチツィード

純正ホームスパン(スコッチツィード)

 

 

そもそもツィードの登場は18世紀の後半からであるらしく、その語源は綾織物を意味するツイル(Twill)の方言(スコットランド語)のツィール(Tweel)の誤読に由来すると言われています

 

英国のテーラー専門誌「テーラー&カッター」によれば、ことの起こりは1825年、産地「ガラシールズ」からの送り状に記されていた説明書きの読み違いに端を発したそうです

ロンドンのある羅紗屋さんがその産地を流れる川の名前(Tweed River)とそれ(Tweel)とを混同したようです

誤訳がときに名訳を生むように、ツイードは「ツィール」の通称=正式名称として公認されるようになり、そのまま今日に至っています

 

 

ツィードは最初、スコットランドの労働者の作業服ないし普段着用の素材として登場し、起源は18世紀の末というのがほぼ定説となっています

 

しかし、一説にはそれに相当する布地が徐々にではあるが18世紀の半ばにはすでに作られていたとも伝えられています

無論、当時はツィードの呼称はまだないわけで、平織の物は「ラシット」綾織りの物は「ツィール」と呼ばれており、いずれもツィードと同様、伸縮性に富みざっくりとした手触りの自家製紡毛織物だったそうです

 

 

この素朴かつ実用的なホームスパンが紳士服に採用されるようになったのは、後の1930年代に至ってのことです

 

最初はカントリージェントルマン達の銃猟用で、そのなかでもグラウス・シューティング(ライチョウ撃ち)用のジャケットに主として使われていたようです

ついで、1850年代から60年代にかけては、アングリング(魚釣り)用や略式のクリケット用のカントリースーツ、あるいは「ツィード・サイド」と称するラウンジ・ジャケット(スーツの前身)などにも徐々に用いられるようになりました

 

そのなかでも、ノーフォークジャケットの原型である、ノーフォークブラウスが紹介された1866年以降、ツィードは飛躍的に使用されていきます

たとえば、ノーフォークジャケット、ニッカボッカーズ、サイクリングジャケットやドライビングジャケット…、カントリー用のラウンジスーツへも採用されていきました

 

 

こうした情勢に拍車をかけるようにして、まもなくお馴染みハリスツィード(1875年)、チェヴィオットツィード(1880年)、ドニゴールツィード(1890年)などのバリエーションが次々にお目見えし、今日の私たちがイメージするところの「ツィード」が勢ぞろいするようになりました

 

 

そして、ツィードがカントリーな服地の代表格として、すなわち“シック”な布地の最高峰まで昇格するに至ったのは、おそらくココ・シャネルによって発表された、俗にいう「シャネル・ツィード(1930年)」の出現が大きかったのだと思います

シャネルスーツについては以前のブログをどうぞ

 

 

以来、ツィード仕立ての服が“シック”の同義語または代名詞とみなされるようになりました

 

 

ツィードには様々な色調、味わいが認められ一種の言い難い独特の趣が見いだされます

アイルランド北部の美しい田園風景をそのまま織り上げた色彩豊かなドニゴールツィード、スコットランド北西の島民の質素な生活習慣を伝えるケンプ入りのハリスツィード、杢糸づかいの霜降りや杉綾が一段と趣を添えている南部スコットランド産のチェヴィオットツィード…ツィードを着るということは、とりもなおさずこうしたそれぞれの布地の持ち味、趣を着るということにほかなりません

↑最後は、グランドジャンプ連載中のスーツの漫画「王様の仕立て屋」っぽく締めてみました

 

 

浜松市のテーラー新屋は「季節の素材」も大切にして服を仕立てています

 

 

 


2015秋冬 メンズテーラードファッション

 

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

約2か月、久々の更新になりますが、皆さまお元気でしょうか?

11月に入りめっきりと寒くなり、街ではだんだんとコート姿の方を多く見られるようになってきました

 

 

実は、仕立て屋にも業界紙というものがあります

内容は新柄生地のことだったり、トレンド、消費マーケット、テーラーリング技術などが掲載されています

 

 

そこで今回のテーマは、業界専門紙が紹介している2015年の秋冬のテーラードファッションをご紹介したいと思います

 

 

まず、今年の秋冬のキーワードは「Gentleman’s Wardrobe」です

 

トレンドは、上着丈はやや短めながらも、ここ数年のものすごくタイトなスーツとは違い、ウエストを絞りボティーラインを強調しつつもエレガンスなシルエットとなっています

また、パンツはスキニーというよりもテパードのシルエット、つまり太ももはゆったりだが、裾へ絞り込んだラインが特徴で裾丈は靴より上のところで収まっているのもが多く見受けられます

 

 

ギーブス&ホークス

ギーブス&ホークス

 

 

ダンヒル

ダンヒル

 

 

ハーディエイミス

ハーディエイミス

 

 

ブリオーニ

ブリオーニ

 

 

オズワルドボーテング

オズワルドボーテング

 

 

 

続いて、ローマのブランド街のウィンドウ・ディスプレーを見ると、全般的にカラフルでラグジュアリー、ゆったりとした着こなしが多く見られます

カジュアルなコートや上質なニットが目立ち、また、白を取り入れたコーディネイトや、スポーティーでタイトなシルエットのパンツ、足元はバックスキンやスニーカーなどを合わせています

 

 

 SCN_0005 (3)

 

 

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SCN_0005 (2)

 

 

SCN_0006 (3)

 

 

 

参考になったでしょうか?

 

 

最近思ったことを少しだけ小声で書いてみます

本来のビスポークらしいスタイルというのは、変わらないスタイルで国会議員がお召になっているような上質で皺のない身体を包み込むスーツだと思います

しかし、巷では着丈の短くタイトなシルエットが流行っていますし、雑誌を見てもトレンドを意識したものしか掲載されていません…しかも女性に好まれるのもトレンドを取り入れたものです

そのような『お客様の身近に正統派のスーツのシルエットがない状態』で、仕立て屋が「正しいスーツの形はこうだっ!」と押し付けるのは、少なくとも日本では難しく、またとても傲慢なことだと感じます

変わらないスタイルを追求して、長く着用して欲しい気持ちは同じなのですが、現在お客様に気に入っていただけなければしょうがないし、やんわりとお客様と相談した上でトレンドにどのようなラインを引いたら少しでも長く着用してもらえるのか、クラシックなスタイルにどれだけトレンドを意識出来るのか、その配分やセンス、バランス感覚が裁断師に求められているのだと感じています

 

 

 

テーラー新屋は正統派のスタイルが好きですが、トレンドのスタイルもしっかり理解した上でお客様の欲しいスタイルをご提案していきたいと思っています

 

 

 


ツイードの種類

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

昨日公開の映画「キングスマン」早速観に行ってきました

仕立て屋が実はスパイ…という設定で、高級な店内、これでもかというくらいの英国調スーツ…ついつい仕事目線で観てしまいました

 

この映画の仕立て屋目線のレビューも書いてみたいですが、今回は、 今年もまだまだ流行りそうなツィードの種類について書いてみようと思います

 

 

ツィードはイギリスを代表する織物で、今日ではスコットランド及びアイルランドを主要産地とする紡毛織物全般を指しており、これには純正ホームスパンのみならず、毳(むくげ)を残留させた半縮絨仕上げのウール地も含まれてます

しかし元来は、手紡手織としは半幅ホームスパンのみを指し、これが狭義のツイードでした

シングル幅の手織りツィード

シングル幅の手織りツィード

 

 

ツィードの起源や来歴については別の機会にして、今回はツィードの主だった種類にフォーカスをおいて書いてみたいと思います

12.5 ツィードにつにて更に詳しく書いてみました→ブログ

 

 

ハリス・ツィード

スコットランド北西部の、アウター・ベブリディーズ群島北部に位置するハリス島産の純正ホームスパンのことを指します

 

原料にはブラック・フェースと呼ばれる羊毛が用いられ、それをざっくりとした感触の肉厚ツィードに仕上げます

とくにケンプと呼ばれる染色不能の白い短毛の混入がこの織物の特色をなし、その概観は野趣に富んでいます

 

いわゆる流行の素材としての登場は1875年からであり、用途は防寒コートやスポーツジャケットなどが挙げられます

 

 

ドニゴール・ツィード

アイリッシュ・ツィードの代表でアイルランド北部ドニゴール地方の農家で、手紡手織された野趣に富んだホームスパンのことを指します

 

原料はアイリッシュ羊毛で、それを太く紡ぎ、異なった色の経糸と緯糸をもって粗い平織りにするのですが、通常その緯糸には原色が用いられ、それが「カラーフレックス」と称する斑点効果となって現れます

 

用途は肉厚なものはスポーツジャケットやカジュアルな帽子、そして比較的肉が薄いものはスラックス用に使用されます

流行素材としての登場は1890年になってからです

 

 

チェヴィオット・ツィード

チェヴィオット羊毛使用の粗織のツィードで、平織、綾織、縦格子織などの種類がありますが、その極めつきはなんと言っても杉綾織です

 

いわゆるツィード仕上げ(半縮絨仕上げ)されたこのツィードは、外観はやや光沢に富み、組織もやや密で、手触りもハリスやドニゴールのそれに比べて柔らかいです

 

用途はコート、スーツ、ジャケット、ズボンなどが挙げられます

 

ちなみにチェヴィオットとは、スコットランド南部のチェヴィオット丘陵に産する羊毛の種類をいい、いわゆる「山岳種」の一種とされています

ファッションとしての登場は1880年代からです

 

 

シェットランド・ツィード

英国シェットランド島産の羊毛素材で、「らくだツィード」とも言います

シェットランド羊毛使用の手触りのやわらかいソフトなツィードで、表面には通常起毛仕上げが施されています

 

組織は綾織、平織、杉綾織等があり、中でもグレンプレードを配したものは古来最も有名です

 

流行素材としての登場は1892年からであり、主なる用途はジャケット、コート、スーツなどが挙げられます

なお安物のシェットランドにはメリノ羊毛が用いられているそうです

 

 

ダイアゴナル・ツィード

綾織ホームスパンの一種で、とくにチェヴィオット羊毛を用いた太い綾織ツィードを指します

 

当時流行したカッタウェイ・フロック(後のモーニングの原型)や、ラウンジコート(現在のジャケットの原型)などに多様されていました

 

現在では、コート、スポーツジャケット、スラックス等に用いられています

流行素材としての登場は1870年代になってから

 

 

その他、ツィードの種類には以下のようなものもあります

 

サキソニー・ツィード

コネマラ・ツィード

セルティック・ツィード

バノックバーン・ツィード

スコッチ・クラッシュ

スポーテックス

ホップサック・ツィード

シルク・ツィード

ロバート・チェヴィオット

カシミア・ツィード

ルイス・ツィード

フィアノート

ヒーザリー・ツィード

フェアアイル・ツィード

モヘア・ツィード

コットン・ツィード…etc

 

 

一口にツィードと言っても、上記のように様々な種類があります

ちなみに、私は先代が40年前に自分用に仕立てたハリスを、現在も現役で2代に渡って着用しています

 

 

静岡県のテーラー新屋は、ツィードはデニムパンツと同様、ある程度着こなれてて味がでたジャケットも素敵だなと思います

 

 

 


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