TOP > コラム > 着こなし

blog

【着こなし】の記事一覧

仕立屋の結婚式

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

本日でテーラー新屋は、現在の場所に店をかまえて無事50周年を迎えることが出来ました(クニエダ洋服店から数えるともっと長いですが…)

これも偏に、応援してくださる皆さまのお力だと思っております

次の50年後の100周年に向けて、より一層「着る人に自信と風格を与える」洋服づくりをしていきたいと思いますので、皆さま、今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます

 

 

さて、私事なのですが…昨年結婚をしました

普段は、結婚式を挙げるお客様に対してアドバイスをする立場の私ですが、それなら仕立屋自身が結婚式を挙げる場合どんな服を仕立て、どんな着こなしをするのか参考になる方もいるのでは?と思い、書いてみます

 

 

まずはどんなスタイルにするのか、自分自身にカウンセリング

Q 日時の確認

A 秋ごろ、14時から始まります

 

Q お色直しは?

A 1回希望します

 

Q こだわるところはありますか?

A 基本的に品のある、クラシックな感じにしたいですが、披露宴では少しだけ変化を持たせたいです

 

 

上記を踏まえたうえで、私は…

挙式:アスコットモーニング(別名:モーニングスーツ) ※1

披露宴:ディナージャケット(別名:タキシード、スモーキングジャケット、ブラックタイ)

に決めました

 

 

アスコット競馬場が由来のアスコットモーニングにした理由には

・挙式が18時以前なので、午前のフォーマルであること ※2

・普通のモーニングコートに比べて華があり、結婚式に向いている

・グレーの色味が白色の花嫁を引き立てる(新郎が派手すぎたり、薄い色味や白色を着て新婦のドレスと被ってしまったりするのを避けました)

アスコットモーニング1

アスコットモーニング1

 

 

披露宴用に仕立てた洋服は、ディナージャケット(タキシード)の中でも少しくだけた感じのするファンシー・タキシードにしました

・披露宴は18時をまたぐ ※2

・デザインはダブルブレステッドで、生地は光沢を持たせたくベルベット

・ディナージャケットなので、拝絹(襟の黒いやつです)をつけますが、スラックスの側章は省きました

・新婦のややカジュアル気味なカクテルドレスに合わせて(もし新婦がオーソドックスなカクテルドレスならオーソドックスなスタイルにしました)

カクテル・ディナージャケット

ファンシー・タキシード1

 

 

礼装は、スーツのみでなくコーディネートも大切です

 

アスコットモーニング2

アスコットモーニング2

 

スタイル:アスコットモーニング

生地:Taylor & Lodgeのオイルスパン

シャツ:ダブルカフスの水色クレリックシャツ ※3

ネクタイ:薄い色味のパープル

チーフ:光沢の無いリネンのもの

カフリンクス:小ぶりのゴールドで光沢の無いもの ※4

靴:内羽根のストレートチップ

アクセサリー1:ブレイシス(サスペンダー)を用いるとベストを短くすることが出来、バランスが良くなります

アクセサリー2:グレーの鹿革の手袋

 

 

披露宴では(【】は基本的なディナージャケット)

 

ディナージャケット2

ファンシー・タキシード2

 

スタイル:拝絹のダブルブレステッド 【もしくはシングルブレステッドのピークorショール】

生地:濃紺のベルベット 【黒色が基本】

シャツ:スタッズ無しの白色ダブルカフスのウィングカラーでヒダの無いもの 【スタッズ&ヒダ有の方が一般的】

ネクタイ:黒色の手結びの蝶ネクタイ

チーフ:少しだけアクセントを付けたく、濃赤のシルク 【白色のシルクチーフ】

カフリンクス:オニキス 【または白蝶貝】 ※4

靴:内羽根ストレートチップ 【オペラパンプス】

 

 

書くとこんな感じになります…細かくていやになりますね(笑)

私は、結婚式の衣装には正装というよりも盛装という意味合いが強いと思っていますので、あまり固苦しく考えず、細かなルールは必ずしも守らなくても良いと思っています

 

ただ、基本的なマナーと言うか考え方があります

 

昼の礼装には、色物は使えますが光沢は避ける  夜の礼装には、光沢を用いますが色柄は避ける

 

です

 

実はアスコットモーニングのコーディネートをどうしようか少し迷っていました

そこで、私はチャールズ皇太子のアスコットモーニングの着こなしを参考にさせていただきました

 

チャールズ皇太子

チャールズ皇太子1

チャールズ皇太子4

チャールズ皇太子2
チャールズ皇太子3

チャールズ皇太子3

チャールズ皇太子4

チャールズ皇太子4

 

上記のマナーを押さえつつ、自然体かつ上品に着こなしていて、大変勉強になりました

 

 

そういえば、日本では、昨年北川景子さんと結婚されたDAIGOさんがモーニングスーツをベースにデザインされた服をお召になっていましたね

ダイゴさん

DAIGOさん

 

google画像検索にて

 

 

 

今後は、自分が結婚式の衣装を決める際に感じたこと気になった点も踏まえてお客様の相談にのり、より一層満足してもらえるような洋服を仕立てられるよう頑張ります

 

 

浜松市のテーラー新屋は、結婚式を挙げるすべての人を応援しています、そして、次の50年に向けて更なる努力をしていきたいと思います

 

 

※1 一般のモーニングコートは、黒のジャケットにコールズボンと呼ばれる縞のスラックス、それにアイボリーやグレー、共地のベストを着用しますが、モーニングスーツは上下ベストとも同じ(スーツ)生地のものを使用します(モーニングスーツの中でも特にグレーのものを女王が臨席するアスコット競馬場で着用されることからアスコットモーニングと呼ぶことが多いです)

 

※2 6時を境に午前のフォーマルには、フロックコート、モーニングコート、そしてイブニングコートがあり、午後のフォーマルにはイブニングコート、ディナージャケットがあります(フロックコートが廃れた現在、午前の正礼装にもイブニングコートが用いられることがあります)

 

※3 クレリックシャツは日本だとクールビズで着用するイメージがありますが、元来、昼のフォーマルな装いの一つです

 

※4 カフリンクスの昼夜の使い分けイメージは下の写真のような感じです

昼用

昼用

夜用

夜用

 


日本陸軍三式軍服の仕立て

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

若葉の緑も色濃くなりはじめ、日中は汗ばむほどの陽気な日が多くなってきました

私の住んでいる浜松市では、5月のGWに行われる「はままつ祭り」の準備が着々と進んでいます

 

さて、先代より仕立屋をやっているとスーツ以外のご注文をいただくことがあります

礼装はもちろんのこと、例えば学生服やトンビ、白衣などの注文をいただいたこともあります

 

 

先日お客様より「軍服」のご注文を頂き、それが仕立てあがりました

今後、自分よりも若い仕立て屋さんが、私と同様「軍服」のご注文を頂いた際の助けになれば良いなと思い、今回は軍服を仕立てる際のポイントを書いてみたいと思います

 

 

まず、今回仕立てたのは「三式陸軍(近衛兵)将校」というご注文でした

残念ながら現物を拝見することは出来ませんでしたが、私自身、ネットはもちろんのこと図書館や映画、護国神社、先輩の仕立屋さんの話などなるべくたくさんの軍服写真や情報を探して仕立てました

 

シルエットはこちらを参考にしました

テーラー新屋 軍服ベース

 

 

仕立てあがったものがこちらです

 テーラー新屋 軍服1

 

テーラー新屋 軍袴1

 

 

 

生地は厚手のサージを使用し、上着は学生服(細腹無し)、ズボンは乗馬ズボンをベースに裁断します

付属品はネットで探して購入します

 

軍服の特徴ですが、アームホールを狭く、袖は袖山を低く袖幅を広くした所謂「めがね袖」にすることで腕が上へ動かしやすいようにします(社交ダンス用の袖に近い形です)

軍袴は基本乗馬ズボンの製図ですが、狩猟ズボンのように実用性重視にするために脇の膨らみを少なくし、乗馬ズボンに比べ後ろを浅くし起こした方が良いのではないかと思います

 

 

続いて細かなディテールについてです

資料を見ていると袖はポケット位置を基準に多少の上下で切り替えをしているようです(これは私個人の推測なのですが、払い下げをした際に袖丈だけ長くするのに都合が良いのかな?なんて思います)

また、三式袖線は後ろに向かってハの字になるように取り付けます

テーラー新屋 軍服2

 

 

ベントは軍刀を吊るす為に左側のみに入ります

位置はスーツと違い、細腹にあたる部分の中間でベントの深さはやはりポケット位置を基準にして良いと思います(仮縫いで微調整してください)

裏地部分の処理は写真のようにしてます(本来裏地の色は国防色と呼ばれる色を使うそうです)

テーラー新屋 軍服3

 

 

襟部分は共地ではなく裏地を使い、襟腰は学生服よりも高くソフトカラーを付ける為のカラーボッチ(この言葉を知らず問屋で探すのに困りました)を縫い付けます

テーラー新屋 軍服4

 

 

 

続いて、軍袴のディテールについてです

右側にウォッチポケットがつき、フロントフライはボタンを使います

腰裏や天狗天前のディテールは写真を参考にしてください

テーラー新屋 軍袴2

 

 

ウエスマンは10センチ前後、ベルトループは剣帯ベルトが7.5センチであることを加味して作ればよいと思います

裾には5つボタンがつきます(採寸時に膝、膝下、ふくらはぎの寸法をお忘れなく)

また、裾のスレーキ部分には薄い芯をいれた方が良いと思います

テーラー新屋 軍袴3

後ろにはバックベルトがつきますが、今回はナシのご注文でした

写真 2016-04-18 16 04 43

最後に略帽を共地で仕立てます

今回はオーダーメイドの帽子を作っている「シャポード・マユ」さんにお願いしました

とても親切で、丁寧に作ってくれました

写真 2016-04-21 13 42 42

いかがでしたか?今後軍服を仕立てる際の参考になったでしょうか?

九八式と三式でまた少し違うようなのでご了承ください(…とはいっても、九八式を流用した三式などもあるみたいです)

実物を見ることが出来なかったので細かなディテールは違う可能性はありますが、おおまかにはこんな感じで良いのではないか?と思います

 

 

最後に

私自身、軍服ははじめての注文で戸惑うことが多かったですが、仕立てる機会をくれたお客様に感謝したいと思います

折角の仕立屋なんですし、お客様の社会的立場に応じたものは勿論のこと、今後もお客様の欲しいデザインのものまで出来る限り要望に沿って仕立てていきたいと思います

 

 

 

浜松市のテーラー新屋は軍服も仕立てますが、なるべく争いがない方が好きですし、平和であることを強く望んでいます


2015秋冬 メンズテーラードファッション

 

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

約2か月、久々の更新になりますが、皆さまお元気でしょうか?

11月に入りめっきりと寒くなり、街ではだんだんとコート姿の方を多く見られるようになってきました

 

 

実は、仕立て屋にも業界紙というものがあります

内容は新柄生地のことだったり、トレンド、消費マーケット、テーラーリング技術などが掲載されています

 

 

そこで今回のテーマは、業界専門紙が紹介している2015年の秋冬のテーラードファッションをご紹介したいと思います

 

 

まず、今年の秋冬のキーワードは「Gentleman’s Wardrobe」です

 

トレンドは、上着丈はやや短めながらも、ここ数年のものすごくタイトなスーツとは違い、ウエストを絞りボティーラインを強調しつつもエレガンスなシルエットとなっています

また、パンツはスキニーというよりもテパードのシルエット、つまり太ももはゆったりだが、裾へ絞り込んだラインが特徴で裾丈は靴より上のところで収まっているのもが多く見受けられます

 

 

ギーブス&ホークス

ギーブス&ホークス

 

 

ダンヒル

ダンヒル

 

 

ハーディエイミス

ハーディエイミス

 

 

ブリオーニ

ブリオーニ

 

 

オズワルドボーテング

オズワルドボーテング

 

 

 

続いて、ローマのブランド街のウィンドウ・ディスプレーを見ると、全般的にカラフルでラグジュアリー、ゆったりとした着こなしが多く見られます

カジュアルなコートや上質なニットが目立ち、また、白を取り入れたコーディネイトや、スポーティーでタイトなシルエットのパンツ、足元はバックスキンやスニーカーなどを合わせています

 

 

 SCN_0005 (3)

 

 

SCN_0006 (2)

 

 

SCN_0005 (2)

 

 

SCN_0006 (3)

 

 

 

参考になったでしょうか?

 

 

最近思ったことを少しだけ小声で書いてみます

本来のビスポークらしいスタイルというのは、変わらないスタイルで国会議員がお召になっているような上質で皺のない身体を包み込むスーツだと思います

しかし、巷では着丈の短くタイトなシルエットが流行っていますし、雑誌を見てもトレンドを意識したものしか掲載されていません…しかも女性に好まれるのもトレンドを取り入れたものです

そのような『お客様の身近に正統派のスーツのシルエットがない状態』で、仕立て屋が「正しいスーツの形はこうだっ!」と押し付けるのは、少なくとも日本では難しく、またとても傲慢なことだと感じます

変わらないスタイルを追求して、長く着用して欲しい気持ちは同じなのですが、現在お客様に気に入っていただけなければしょうがないし、やんわりとお客様と相談した上でトレンドにどのようなラインを引いたら少しでも長く着用してもらえるのか、クラシックなスタイルにどれだけトレンドを意識出来るのか、その配分やセンス、バランス感覚が裁断師に求められているのだと感じています

 

 

 

テーラー新屋は正統派のスタイルが好きですが、トレンドのスタイルもしっかり理解した上でお客様の欲しいスタイルをご提案していきたいと思っています

 

 

 


PAGE TOP